箏曲が現代に生きる伝統であることを海外に伝える

平成30年度文化交流使(長期派遣型)
米川 敏子
生田流箏曲・地歌 演奏家
  • 派遣国:カザフスタン,イギリス,ドイツ
  • 活動期間:2019年2月21日~3月22日

この度の文化交流使として活動を行ったヨーロッパにおいて,演目上で特に私が強調致しました事は,地歌・箏曲のジャンルが,江戸時代初期の作品だけを伝承しているのではなく,近世の江戸時代に変化した様式を含み,更に明治・大正・昭和・平成と変化し続けてきたものを含むことを明らかにすることでした。その為,最も初期の箏組歌・三味線組歌,江戸時代後期の作品,そして明治新曲を演奏し,更に私自身の箏と西洋楽器との作品を紹介致しました。

アルマティにある カザフスタン日本人材開発センターにてワークショップ

箏とヴァイオリン又はヴィオラ,オーボエなどの西洋楽器の作品を演奏したり,英国人の尺八奏者と合奏することにより,このジャンルが決して閉ざされたものではなく,広く世界の音楽に開かれていることを示して参りました。
又,私が西洋楽器の演奏家と演奏で対話をすることにより,地歌・箏曲演奏家が柔軟な音楽性を持つことを示すことができました。

アスタナ オルガンホールに約600人の聴衆を迎えてのコンサート『秋風の曲』

私は,古典と創作と言うものは車の両輪であると常々考えております。古典無くして創作は存在せず,創作があってこそ古典の真髄,力,素晴らしさを再発見できるのではないのでしょうか。古典を伝承して行く事と同時に新しい作品を創り,未来の古典を生み出す事も私たちの使命ではないかと考えます。
今回の文化交流使の活動の中で,海外においてこの事を実践でき,ご好評をいただきました事も,私に取りまして大きな励みとなりました。

ミュンヘン五大陸博物館ホールにて総領事夫人,副総領事,ヴァイオリニスト鈴木舞さん他

又,今回の公演の事前の準備として,各国へコンサートの企画構成や意図,演目解説や歌詞の対訳等を,数ヶ月前からのやり取りにより先方にお渡ししたことが,現地の聴衆にご理解いただき易かったのではないかと思います。
邦楽器は音色が特徴と言われますが,今回は楽器を扱う専門家が同行できなかったので,箏に化繊弦( 化学繊維の糸)を使わざるを得ず,絹弦,特に上皇后さまより御下賜の繭による絹糸の響きを海外にご紹介できなかったことが,まことに残念でございました。

ケルン 日本文化会館コンサート オーボエ 高木亜美さんと『千鳥の曲』

ともあれ,各都市で聴衆の大歓迎を受け,鳴り止まぬ拍手を頂戴致しましたことは,あらゆる苦労を払拭してくれました。
全ての皆様に心より感謝申し上げます。

 

米川 敏子 プロフィール