実演,交流,身体の変化,そして世界の語り芸へ。

平成30年度文化交流使(長期派遣型)
玉川 奈々福
浪曲師・曲師
  • 派遣国:イタリア,スロベニア,オーストリア,ハンガリー,ポーランド,キルギス,ウズベキスタン
  • 活動期間:2018年5月27日~7月10日

ヨーロッパから中央アジア,7か国をまわり,実演13公演,ワークショップを4回,その他学生さんとの交流会や,各国の語り芸のプロたちとの交流会などをいたしました。
実演は,字幕がしっかりできていれば問題はないだろうと思っていました。ただオペレーターとの打ち合わせが肝要。私のセリフの進行に合わせて,一行ずつ出してもらうこと。息が合わないと,先にオチがお客さんに見えてしまう。各国の担当者がそこをよく理解してくれ,オペレートも素晴らしかったです。

翻訳,通訳,字幕オペレートがいずれも素晴らしかった国際交流基金ブダペスト日本文化センターのスタッフの皆さんと。

おかげで,江戸時代の夫婦の話がよく受けました。一部現地語も入れたので,爆笑と拍手をいただきました。楽しんでもらえたのではないかと思います。
ただ,筋は理解してもらえても江戸時代の建物衣装風俗は……と心配したのですが,日本に興味のあるお客様が多く,黒沢映画をはじめとする日本映画をよく見ていらして,ヨーロッパでも中央アジアでも,「武士の時代」の風俗をよくご存知でした。多くの表現者の発信の上に,自分の今回の仕事があるのだということを思い知りました。
ヨーロッパは,ホールの響きが日本と全然違いました。その響きを体が感じて,おのずと芸が変わってくる,ということも体感しました。帰国後,声が変わったねとずいぶん言われました。わずか1 か月半なのに,体は空間認識によってずいぶん影響受けるようです。

タシケント公演。マイク使わなかったが,残響具合がとてもよいホールだった。

最も面白かったのは,中央アジアでの語り芸との交流。キルギスではマナスという,神授型語り芸との交流会と共演,ウズベキスタンでは,ドゥタールとの共演があり,またワークショップではバクシという語り芸と交流しました。
帰国後調べるとバクシは,「現在でも少数ながらウズベキスタンで活動している」「過去において芸能だけでなく,宗教的職能者としての役割をも担っていた」「仏教とともに中央アジアの各地域に伝播し,当地域におけるイスラムの影響が強まるにつれ,仏教とバクシとの繋がりが薄れていった」(ハルミルザエヴァ・サイダ「ウズベキスタンの語り手バクシ : 過去と現状」『アジア文化研究』15 号収録)。

キルギスのマナス財団にて,十一歳のマナスチの少年。七歳のときにマナスチになったという。

バクシを語っている人は,現在40 人から50 人。浪曲と同じ絶滅危惧芸能です。共演した男性は,小さい頃からバクシを聞いて育ち,いまは民族音楽学校で学んでいる由。口琴や小さな竹笛もあやつり,見事な芸人でした。
この経験を生かして,他国の語り芸の探索,交流が今後もできればと願っています。

 

玉川 奈々福 プロフィール