音楽とは何か,を感じる旅

平成30年度文化交流使(長期派遣型)
笠松 泰洋
作曲家
  • 派遣国:エクアドル,アルゼンチン,チリ,ペルー,イギリス,オーストリア
  • 活動期間:2018年11月13日~12月14日,12月31日~2019年2月6日,3月2日~ 3月24日

笠松は,文化庁文化交流使に指名され,非西洋の音楽文化を持つ日本以外の地域の音楽家が,自身の民族の伝統音楽と西洋音楽をいかに捉えているかを探りたい,という気持ちから,南米に行こうと思いました。最も地理的に日本から遠い音楽家が私の曲を演奏すると,今までにない演奏になるのではないか,という期待もありました。

ペルーでの若いカルテットメンバーとのリハーサル

南米4か国とロンドンで,各国で活動する演奏家の方々とリハーサルをし,コンサートを開き,そこに集まって頂いた方々の感想をお聞きし,得た結果は全くの予想外でした。各地に在住の日本人の方々からは,例えば「チリの若い演奏家からまさに文楽や能の要素が感じられて驚いた」という類の感想を各国で頂きました。そこで思い浮かんだのは,「音楽は世界の共通語」という言い古された言葉でした。私はそれを,単に西洋音楽は世界に通じる,という表面的な西洋至上主義と受け取っていました。

ペルーのコーラスの子供達と

各国でのリハーサルで私は曲の内容を説明しましたが,それは人の感情や状況であり,どの国でもよく理解され,理解されるとまさに私の欲しい音が出ました。能や文楽の要素が入っていても,そこに生きる人間の感情や状況が表現されると,日本的音楽そのものが伝わった,と受け取られたのです。「音楽は世界の共通語」とは,「音楽は,人間に先天的に備わっているものに立脚する表現であり,それゆえ,後天的に取得される言語や文化には関わりなくホモ・サピエンスには受容される」ということだったのです。

ペルーでのシンフォニア・ポル・エル・ペルーとのリハーサル

一方,ウィーンでの英語によるオペラの制作と上演は,日本でオペラやミュージカルを作曲する者として,日本の舞台作品をどうしたら海外に持って行けるか,という課題に対する挑戦でした。日本語で作ったオペラを英語で作り直したら,最初から英語で作った作品にはない音楽が生まれるのではないかと思ったのです。

ウィーンでのオペラ『人魚姫』公演カーテンコール

様々な人の協力を仰ぐことになりましたが,厳しいウィーンの観客がほぼ全員スタンディングで喝采してくれたのを見て,それは果たせたと思いました。この経験をどう生かして今後の活動を展開するかが,これからの課題だと思っています。

 

笠松 泰洋 プロフィール