三味線が外国で説明されるとき

平成29年度文化交流使(長期派遣型)
本條 秀慈郎
三味線演奏家
  • 派遣国:トルコ、アメリカ、イタリア、フランス、イギリス、ドイツ、チェコ、ロシア
  • 活動期間:2018年3月12日~6月29日、9月2日~10月17日

Japanese Banjoのように説明されることがある。しかしながらこの楽器の持つその特有の“物事の質感”でさえ表現し,同時に現代の趣にとても共鳴していることを感じると,それをより深く伝えることのできる“表し方”があるのではないかと,今もそれを探し続けている。
今回の“旅”は新たな時代を予感するものであると同時に想像を絶する過酷なものでもあった。
私はただ三味線を紹介するだけというような内容や,自分のレパートリーに頼ることをこの旅の中で避けた。世界には現代音楽を生業とするアンサンブルがいくつか存在しており,彼らを頼りに現代作曲家の新作に互いに取り組めるような旅をしようと心に決めていた。

トルコ・アンカラの伝統音楽の演奏家と共演後のひと時。

まずはじめだけは楽器のルーツは辿りたいと思い,その一つが存在するイスタンブール,アンカラヘと訪れた。“メイ”や“サズ”といった楽器の演奏家と語る。三味線の多様なチューニングによく似た音の配列が, トルコの楽器にはいくつも存在した。地域によって音楽が異なる部分など共通するものがある。
パリでアンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーとの共演。彼らは有難いことに三味線とのコラボという意識を直ぐに通り越してくれた。しかしあのブーレーズに組織された繊細であり,ソリスティックで魔法の様な彼らの力に圧倒されてしまった。彼らの中に三味線の音は響いただろうか。
ロシアはクラスノヤルスクで三味線協奏曲を初演。シベリア中央に位置する地,周辺には少数民族が沢山存在し,その声を拾いながらオーケストラを先尊していくというコンセプトの作品。大きな衝撃を受けた。自分自身の足りていない力は民族的なものの中に存在している。

ニューヨーク・ジャパンソサエティ主催公演。ニューヨークタイムスに取り上げられる。

ニューヨークジャパンソサエティの主催で師のコンサート“三味線の古典から現代”と,その後インターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブルとの共演で“三味線の現代から未来”をコンセプトとした企画を連続して開催して頂いた。
ラストはドイツフランクフルトでアンサンブル・モデルンとの共演。彼らの演奏に対する並々ならぬ知性,胆力,真摯な姿勢に脱帽した。彼らが行なっている教育を含め,様々なことに対するドイツ政府の協力的な気質や体制が1つの大きな力になっていると感じた。日本とヨーロッパに違いはあるが四季の中で我々の自然に対する共通した感謝の思いや,平和への願いをテーマに即興演奏したりもした。

パリにてアンサンブル・アンテルコンタンポランとのリハーサル。バリ日本文化会館にて

三味線そして現代音楽,離れているようで1番近い世界。
今回大きな旗と共にその視野を広げ私の身体に強力な“実体験”を刻ませて頂いた。
これからはその衝撃を超えて歴史の中で,次世代に繋がるものがすこしでも残せればと,絶えず精進したい。すべてに感謝。

 

本條 秀慈郎 プロフィール