身近なものの見方を介したミクロな文化交流

平成29年度文化交流使(長期派遣型)
鈴木 康広
メディアアーティスト、武蔵野美術大学准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員
  • 派遣国:アメリカ、カンボジア、ドイツ、アイスランド
  • 活動期間:2018年2月11日~3月16日

日常の何気ない事象に新たなつながりを見出し,幼少の頃から関わりをもってきたものを媒介に作品を制作してきました。誰しもが関わりのあるモチーフを介した作品が,異なる地域や文化の間でどのような触媒になるのか。活動を開始して20年ほど経ち, ようやく視野が広がってきました。
今同の活動を通して4カ国5都市を巡りました。ニューヨークでは,在ニューヨーク日本国総領事館で展示を行ったことで,来場者には予期しないかたちで作品を観てもらうことができました。日本人ならではの視点からニューヨークの日常を漫画に描いている近藤聡乃氏を訪ねで情報交換をしました。その他, 2003年に展覧会に参加したMoMA PS1や, 9/11 Memorial Museum を視察しました。

ワークショップ Yasuhiro Suzuki“Your world from another view” 「日本カンボジア絆フェスティバル2018」CJCC(プンンペン、カンボジア)

カンボジアでは,王立プノンペン大学で開催されたJapan-Cambodia Kizuna Festival 2018に参加し,全長6mの『空気の人』を展示しました。日常の光景が別のものに見えた瞬間を切り取る「見立て」をテーマにしたワークショップでは,学生をはじめ幅広い年代の参加者と交流。シンプルな内容ながらクメール語と日本語の構造の違いを強く意識し,イメージが人に伝わる瞬間の機微を感じました。大使館の江崎徹氏からの助言で,滞在中にクメール・ルージュによる虐殺跡地のトゥールスレン博物館へ。音声ガイドによるサイトスペシフィックな展示体験に非常に強い衝撃を受けました。

アイスランドの『空気の人』

ベルリンに向かう途中.人類の負の遺産ともいうべき場所を巡っていることにようやく気づき始めました。ホロコースト記念碑やベルリンの壁の前で『空気の人』を浮かべることで,作品を媒介にその場所の空気を肌で感じました。目に見えない歴史をそこに感じ.空気を人の形に象ることについて改めて考えさせられました。ベルリンでは.ベルリン日独センターの清田とき子氏からHaus am Waldseeのブローム・ベルグ館長を紹介していただき.改装中の美術館を視察。森と湖に面したロケーションに常設された作品からドイツの作家の思想を垣間見ることができました。
レイキャビクでは地球が剥き出しになった大自然に『空気の人』を投げ出し. アートを媒介にした自然と人間との関わりについて考えました。市立図書館と地熱プールでの個展.道端でのパフォーマンスで通り掛かりの人に頻繁に声を掛けてもらい大変励みになりました。

『空気の人』ゲイシール間欠泉にて(アイスランド)

今回の活動を通して,身近なものを介した物事の感じ方に触れるミクロな文化交流の意識が芽生えました。誰しもが関わりをもったことのあるモチーフを介した作品が.言語と現象との隙間に隠れている感性を顕在化する触媒となりうるのではないか。見ず知らずの人と昔からの知り合いのように感じられる瞬間を海外でも見つけていける手応えを感じました。

『空気の人』鈴木康広展 “A Journey around the Neighborhood Globe”レイキャビク市立図書館(レイキャビク、アイスランド)

 

鈴木 康広 プロフィール