中南米紀行

平成29年度文化交流使(長期派遣型)
大友 良英
音楽家
  • 派遣国:アルゼンチン、チリ、ブラジル、メキシコ、アメリカ、イタリア、フランス
  • 活動期間:2017年10月31日~12月13日、2018年2月1日~2月15日

「私を呼びたい方連絡ください。地元の音楽家と共演した共演したく…」とfacebookに書き込んだのが2017年2月。反応の多くは中南米の即興やノイズ系の音楽家からでした。こんなに特殊音楽好きがいるのかということ, 自分の音楽が地球の反対側にも知られ敬意を持たれていることに驚きました。今回は欧米も訪問しましたが, ここでは特に成果の大きかった中南米の中でもアルゼンチンとブラジルに絞ってレポートします。

リオのファベーラの子供たちとのワークショップ

ブエノスアイレスで出迎えてくれたのはピアニストのファビアナ・ガランテ。地元の音楽家たちとの即興セッションやレコーデイング,大学の講義を組んでくれました。また重鎖ギタリスト,フェルナンド・カブサッキのアレンジで市の中心にある大ホールでサンチアゴ・バスケスをはじめとしたアルゼンチンの大物音楽家達とセッションを,地元のクラブではサンチアゴが長年継続しているアンサンブルLa Grandeにゲスト参加しました。私が芸術監督を務めるフェス「アンサンブルズ東京」にサンチアゴを呼び,日本版La Grandeも2018年8月後半に実現しました。
ブラジルは音楽の宝庫でもあり,また新しい形の即興演奏が私たちの音楽の影稗を受けて今育ちつつある,そんな感触を受けました。私を出迎えてくれたのはリオのペーシストのフェリペ・ゼニコラをはじめとした各地の即興演奏家たちで,ブラジル各地で私が来たのにあわせていくつものフェスやレコーデイング, ワークショップや講演会が開かれました。リオ在住の大物音楽家アート・リンゼイとレコーデイングが実現したのも嬉しい成果です。
何より素晴らしかったのは, リオの貧民街ファベーラでクラシックを勉強している100人ほどの子供達(6~18歳)のグループ「Ação Social Pela Musica」とのワークショップでした。
基本はクラシック,でもサンバパーカッションの子もいるところがプラジル独特です。常に犯罪の危険にさらされている子ども達が,音楽を通して社会と接することで悪い道に進まないように…指導者たちのそんな思いを背景に連営されています。私のワークショップは楽譜を一切使いません。誰かが出した音をきっかけに,誰かが指揮者となって,それをどんどん発展させてアンサンブルを即興的に組んでいく…。わずか3時間ほどで,即興音楽に触れたことのない子供たちが,笑顔で音楽を生みだしていく姿は感動的ですらありました。またリオの日本人学校での授業も楽しい時間でした。どちらもまた機会があればぜひ行きたいと強く思っています。

リオの日本人学校での音楽授業

治安のことばかりいわれる中南米ですが,人は楽しく生きるものだってことが理屈ではなく伝わってくる場所でもあり,沢山の友人も出来,私は身も心も元気になって帰国しました。様々な点でよく似ている東南アジアと南米のミュージシャンたちを将来出会わせるようなことができたら, また日本がそのハブの役目を果たせたらどんなに素晴らしいだろうと思っています。実際日本が果たせる役割があるとすれば,単に自国の文化を紹介するだけでなく,世界中で始まっているインデイペンデントな動きを結びつけていくことではないでしょうか。この動きはまだとても小さなものかもしれません。でも将来,世界が繋がっていく上で大きな可能性があると思っています。とにもかくにもまた行きたい,そしてこの出会いを次に繋げていきたい,そう考えています。
※2017年11~12月にかけての中南米ツアーは同行した樋口勇輝の手で撮影され「Otomo Yoshihide Laten America Tour Movie 1~22」としてコンサートやワークショップ全ての様子がyoutubeにアップされています。

 

大友 良英 プロフィール