文化交流使の活動を終えて

平成28年度文化交流使(長期派遣型)
佐野 文彦
建築家,美術家
  • 派遣国:イタリア,デンマーク,ベルギー,フランス,オランダ,アイスランド,ドイツ,韓国,マレーシア, フィリピン,中国,インド,エチオピア,メキシコ,アメリカ,インドネシア
  • 活動期間:2016年8月20日〜2017年5月10日

文化交流使として,16 か国,32 都市以上を旅してきました。
元々,数寄屋と言われる茶室や料亭を作る大工だった私は,日本が文化や伝統を失ってきていることを日々感じていました。文化交流使として海外へ派遣されることが決まったことから,様々な国や地域に残る技術,素材,環境などの文化を,グローバル化や経済優先の政策,無秩序な機械化や開発などによって失われてしまう前に見ておきたい。
また,それらの文化に私がかかわることで何かができるのではないかと思い,現地の材料を使い,現地の人々と,現地の文化を取り入れた空間を作り,茶会を開催するというプロジェクトを立ち上げました。
最初はブリュッセルにて,「In praise of waves」という展覧会にインスタレーション作品で参加しました。
ブリュッセルというベルギーでは大きい都市で,ローカルな素材とは何かを考えました。その際,各地で建物を工事している風景を目にし,廃材を使うことを考えました。
ヨーロッパでは築200 年,300 年というアパートなどは珍しくありません。

Negros にて竣工した建築物

廃材を集め,小さな空間を作り,オープニングパーティーで茶会をしてもらいました。マレーシアのランカウイ島では,現地で「カンポンハウス」と呼ばれる小屋を移設,現地の大工とともに改造し,外部にハーフミラーフィルムを貼ったアクリルパネルによって空間に境界を作りました。
またそこでも現地の人にもてなしのティーパーティーをしてもらいました。
フィリピンのネグロス島では,ヤシの木とヤシの葉を使った現地式の高床になった茶室を建てました。パーティではかかわってくれた人々やその家族,市長や副市長も参加し,豚の丸焼きなどを作ってもてなしの形を見せてもらいました。
アムステルダムでは,デザインホテルとして有名なロイドホテルの一室を,100 ~ 300 年ほど前に使われていた古材を集め,和室を作りました。「MONOJAPAN」という日本のプロダクトの展示会の開催に完成日を合わせ,駐オランダ日本大使やゴッホミュージアムのキュレーターなどのゲストも参加し,茶会を開きました。
オープニングパーティーや展示会期間中は数百人の人々が茶会に参加したり,部屋を訪れたりしました。

Langkawi にて展示作品内でのセレモニー

エチオピアでは,メケレ大学の学生へのレクチャーと,ワークショップとして,彼らのもてなしの形であるコーヒーセレモニーを行うための部屋,コーヒーセレモニールームを,学生たちと設計,施工しました。
韓国では済州島に,チャンチンの木を使って,茶室を建てました。木材を探すところからスタートし,原木を加工,韓国の伝統的なディテールを用い,済州島によく見られる茅葺の家のプロポーションを持った小屋を建設しました。
これはまだ完成はしていませんが,オープニングのレセプションを行う予定です。
その他の国でも,形にはなりませんでしたが様々なプロジェクト,打合せや出会い,食事や遺跡,文化財,アート,デザイン,自然など,多くのものを見て,経験を得ることができました。この経験は私の人生においてとても大切なものとなるでしょう。

Amsterdam にて設計,施工した客室

 

佐野 文彦 プロフィール