メキシコ,インド,フランス訪問

平成27年度文化庁文化交流使(長期派遣型)
畠山 直哉
写真家
  • 派遣国:メキシコ,インド,フランス
  • 活動期間:平成27年9月2日~平成28年2月10日

私は2015 年9 月から5 ヶ月間,メキシコに滞在した。十年以上も前から,メキシコシティに住む知り合いは「ぜひ来て下さい」と誘ってくれていたが,機会には恵まれず,また自分がそこでどんな活動ができるのかも想像できなかった。しかし,文化庁との話し合いが本格化した昨年の春頃,その知り合いから「9 月にメキシコ大地震30 周年のシンポジウムを計画しており,その発言者として呼びたいが,旅費の工面に難儀している」と聞き,ならば「文化交流使」の活動としてそれに出席してはと思い,メキシコ行きを決めたのだった。
私は2011 年3 月に起きた東日本大震災で,実家や肉親を失うという目に遭っており,以来複雑な思いと共に,故郷の陸前高田の風景を現在まで撮影してきた。災害は世界の 至る所で起きる可能性があるもので,メキシコでも1985 年9 月に起きた大地震では,建物の倒壊などによって,首都に暮らす1 万人もの人々がその犠牲になった。災害は報道で伝える以外に,個人レベルの言葉で伝えることで,深い議 論を生み出す。その意味で,私の経験や考えをメキシコの人々と共有することも,「文化交流」と呼べるのではないか,と思うに至った。
2015 年9 月頭にメキシコに到着して以降,首都にあるメキシコ国立芸術センターにおいて,メキシコ大地震の報道で知られる写真家のマルコ・アントニオ・クルスとの対談をおこなったのを手始めに,10 月にはオアハカの写真センター,国際交流基金デリー事務所の招きによりインドに飛びデリー写真フェスティバル,そこからフランスに向かい,11 月にはパリの文学者会議,帰国後にメキシコ自治大学美学科,2016 年1 月にはユカタン半島のカンペチェおよびメリダの芸術センター,クエルナヴァカのモレロス州立大学,2 月にはモンテレイ大学およびモンテレイ現代美術館などで,自分の作品や考えなどを,大震災以前と以降に分けて紹介し,可能な場合には聴衆と話し合いをおこなった。
講演の合間には,主にメキシコ・シティ周辺で風景写真の撮影をおこなった。慣れない土地で言葉(スペイン語)に不自由していたため,英語ができ運転をしてくれるアシスタントを現地で雇った。写真は,音楽や舞台芸術などと異なり実演性を伴わないので,「交流」は即時的には生まれない。撮影成果の一部を最近,東京の資生堂ギャラリーで披露することができたが,全体をまとめるにはもう少し時間が必要であり,その意味で私の「文化交流」の後半は,これからだと思っている。

 

オアハカ,マニュエル・アルヴァレス・ブラヴォ写真センター。2015/10/23

オアハカ,マニュエル・アルヴァレス・ブラヴォ写真センター。2015/10/23

グアナファトでの撮影。2015/12/24

クエルナヴァカ,モレロス州立大学。2016/1/27

モンテレイ現代美術館。2016/2/4