寿福の祈りと,多様性の享受

平成26年度文化庁文化交流使(海外派遣型)
山井 綱雄
金春流能楽師
  • 派遣国:フランス,アメリカ,カナダ
  • 活動期間:平成27年2月1日~3月15日

2015 年の2 月1 日から3 月15 日までの42 日間,文化交流使として,フランス(パリ),アメリカ(ニューヨーク・シラキュース・バーリントン・ポートランド・ロサンゼルス),カナダ(ヴィクトリア・バンクーバー)の3か国8 都市を廻りました。

私は,西洋文化と日本を始めとした東洋文化との比較,それらを含む〈現代〉という時代の流れの中で,世界中の人々,特に西洋文化の方々に,能を通じて日本伝統文化の意義をどう伝えるかを考え,世界中の人々の心にダイレクトに訴える,生きるヒントや糧を与える「現代の活きた芸術」として見せるために,様々なことに工夫を凝らし,挑戦しました。

具体的には,一般の方向けや学校・大学において,能ワークショップ,共同制作,デモンストレーションを行いました。特に,カナダ・バンクーバーで行ったワークショップでは,現地の方20 名に謡・仕舞の5 日間連続稽古を実施し,最後は発表会を敢行。日本から応援に来た私の後援会社中30 名も客演し,親善交流が実現しました。また,同じくバンクーバーでの現地作曲家による能『通小町』を基にした実験能オペラ『MOMOYA』の共同創作では,自ら主演を務め,好評を博しました。(現在,現地にて本格オペラとしての上演計画が進行中です。)

さらに,活動のメインとして据えた「温故知新」の特別デモンストレーション『繋ぐ~多次元を~』は,舞・謡・能楽囃子にピアノを入れて構成し,その結果,各地でオール・スタンディングオベーションを頂きました。

実演の後には必ず,敢えて「言葉」で,作品の意義をお話ししました。それは「多様性の享受」「共存共栄」。我が金春流は1400 年に及ぶ永きの古から,能を通じて「皆が幸せであることを祈る」ことを続けてきました。金春流の初代は中国・韓国からの渡来人であり,大陸からの宗教や芸能と,日本古来の宗教・芸能が渾然一体となり熟成され,今こん日にちの能が成立したのですが,こうした「能のルーツ」をお話しする中で,日本人は〈異なる〉ことを認めて受け入れることを永年行ってきたことを強調しました。敢えて言葉にすることで,今世界が直面している様々な問題を意識し,そうした状況における能の深い存在意義を伝えたかったのです。その結果,各地で深い同意と拍手を得ることができ,能を通じて「日本のココロ」を伝えることができたと感じています。

一般・学生向けに能の舞を実演

一般・学生向けに能の舞を実演

アメリカ バーモント州ミドルベリー大学でのワークショップ

アメリカ バーモント州ミドルベリー大学でのワークショップ

学生による能面・装束の体験 視野の狭さに驚嘆した様子

学生による能面・装束の体験 視野の狭さに驚嘆した様子

『擦り足』の実演に見入る学生たち

『擦り足』の実演に見入る学生たち

山井綱雄プロフィール