文化交流使とは

平成26年度文化庁文化交流使(海外派遣型)
櫻井 亜木子
琵琶演奏家
  • 派遣国:エルサルバドル,ブラジル,アメリカ,イギリス,イタリア,スイス,アルバニア
  • 活動期間:平成27年1月7日~3月21日

文化交流使をお引き受けしてから,「文化交流の持つ意味とは?」という言葉が常に頭を駆け巡っていましたが,ある経営者の方から「俺たちは物作りのプロ。でも文化までは運べない。」という言葉を頂きました。日本文化に裏打ちされた高性能の技術や製品ではなく,「文化を運ぶ」とはどういうことなのか。文化を届けることで日本人の気質や日本そのものを知ってもらい,そのことが物流や経済に繋がるのだとしたら,一文化人としての自分の役割は大きい。それを意識しながら,自分なりの文化交流を突き詰めていけば,より深みのある人生を歩むことができるのかもしれない。そんなことを考えながら活動に励みました。

プログラムは,怪談『耳なし芳一』。日本独特の旋律で貧しかった時代背景が聴いてとれるわらべ歌。平家物語の『祇園精舎』の解説から現地の方々は琵琶の侘寂をどう感じるか,やってみるしかない。乾電池式キャンドルに赤い敷物,行灯に,和紙と墨汁で般若心経を書いて設置,ライトは暗く青光で。舞台もなるべく和風となるよう演出に心を砕きました。また,着物や帯の話や,草履には右左がないなど,今では「エコ」として語られる先人の知恵についてもお伝えしました。

活動中は印象的な出会いが沢山ありました。ブラジルで,戦争のため二度と日本の土を踏めず苦労した親を見て育った方々が「我々は日本人だが日本を知らない。しかし貴女の歌・着物で歩く姿を見て『日本』を感じた。行くことは難しいけど,今日はありがとう。日本人に生まれて良かった。」と声をかけてくださったこと。ニューヨークでは,国際連合日本政府次席代表の主催するパーティーで,約16か国の方々から口を揃えて「琵琶は平和へのメッセージであると感じた。鎮魂の音色を世界に届けてほしい。」と,自国や隣国で戦争が起きているがゆえの感想を頂いたこと。また,欧州では,「悲しいお話を歌ったんでしょう?私も何だか泣いちゃったわ。」という感想もありました。音楽家にとって「訳もわからず感動した。」と言われるほど嬉しいことはありません。

インターネットやCD の中ではなく,目の前で演奏する私は,「歩く小さな日本」であり,「直接会うこと」で,その個体からまるでお香が漂うが如き存在でなければならない。今回の活動では,現地の方々にそれを感じてもらえたと思います。例え草の根運動であっても,歩みを止めず,演奏し続けなければいけないと,強く強く感じた旅でありました。

ここに全ての皆様へ,感謝を申し上げます。

中南米では『耳なし芳一』を,NY では『雪女』

中南米では『耳なし芳一』を,NY では『雪女』

わずか30 余年前まで日本と国交のなかったアルバニア。アルバニアっ子は日本大好き

わずか30 余年前まで日本と国交のなかったアルバニア。アルバニアっ子は日本大好き

ブラジルでは浴衣姿で『平家物語』をお届け

ブラジルでは浴衣姿で『平家物語』をお届け

イタリア クレモナ・ストラディヴァリウスヴァイオリン養成所の学生と

イタリア クレモナ・ストラディヴァリウスヴァイオリン養成所の学生と

櫻井亜木子プロフィール